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ハイドン クラヴィーア作品大全

ハイドン クラヴィーア作品大全

ハイドン・クラヴィーア作品大全の概要

Haydn

18世紀後半の鍵盤音楽事情は複雑です。今日よく知られているクラヴィコード、チェンバロ、フォルテピアノといった鍵盤楽器だけではなく、今では全く姿を消してしまった新機軸の鍵盤楽器が目白押しでした。

さてこういった鍵盤楽器を当時の人たちはどのように演奏していたのでしょう。発音機構の全く違う様々な楽器を違和感なく演奏していたのでしょうか。大バッハの次男であるエマヌエル・バッハは「最近のフォルテピアノも、耐久性があって、よく製作されているかぎり、多くの長所をもつが、ただ、そのアクション(Tracktirung)は特別であって、簡単にはマスター(ausstudiren)できない。」*1と記しています。チェンバロやクラヴィコードの演奏に通暁していた彼のような大家にとっても、発音機構の異なった鍵盤楽器を自由に弾きこなすことはそう簡単ではなかったことがうかがえます。

いっぽう彼のクラヴィコード評価は「本来からするとクラヴィーア奏者すべては、よいフリューゲルとよいクラヴィコードの両方をもたなければならない。もちろんそれは、どの曲も両方の楽器で交互に演奏することができるようにするためである。クラヴィコードで上手に演奏できる人は、フリューゲルも上手に演奏するが、その逆も真なり、とはならない。したがって、よい演奏表現を習得するにはクラヴィコード、必要な指の力をつけるにはフリューゲルを用いなければならない。」*2という記述からも分かるように、鍵盤奏者の演奏習得の基礎と考えている向きがあります。こういったクラヴィーア観をもつエマヌエル・バッハを若かりし頃のハイドンは熱心に研究し、作曲法と演奏技術の腕をあげていったのでした。

今回の企画「ハイドン・クラヴィーア作品大全」は、今日演奏される機会のまれなハイドンの初期・中期のクラヴィーア作品も含めてハイドンの全クラヴィーア作品を採り上げ、クラヴィコード、チェンバロ、フォルテピアノの3種鍵盤楽器によって演奏し、クラヴィコード中心の演奏からフォルテピアノ中心の演奏への転換という当時の演奏観に添いながら作品について考え、ハイドンのクラヴィーア作品の魅力を再考するとともに、クラヴィーア演奏テクニックの大転換機であった18世紀後半の鍵盤音楽事情の一端を明らかにしようとするものです。


Vol.1 フォルテピアノへの転換期から18世紀器楽曲の終焉へ 2009.5.30. (フォルテピアノ)

ソナタ 第56番、第62番、第10番、第58番、第59番、 カプリッチョ ト長調

まずフォルテピアノで演奏することが想定されていたと考えられる作品を採り上げ、ハイドン作品の魅力について再認識していただき、第2回以降のクラヴィコードその他の楽器による演奏の布石となればと考えて企画しました。


Vol.2 クラヴィコードとハイドン 2009.7.5 (クラヴィコード)

ソナタ 第15番、第53番、第44番、第14番、第2番、第48番、 アリエッタ 第1番

クラヴィコードによる演奏でした。クラヴィコードは20世紀の音楽事情からあまりにもかけはなれている性格を持っているために復興の遅れた鍵盤楽器でした。その音世界の特殊性についていくら言葉を尽くしたとしても言い得ないものであるといえるでしょう。そんな音世界を可能とした18世紀までの音の環境を想像しながらハイドン作品の魅力について再認識していただけたでしょうか。


Vol.3 チェンバロによる響きの再考 2009.7.26 (チェンバロ)

ソナタ 第9番、第1番、第43番、第13番、第50番、 アリエッタ 第2番

第3回は引き続き、現代のピアノのレパートリーとしては殆ど採り上げられることのない初期、中期のクラヴィーア作品を生き生きとよみがえらせるためチェンバロによって演奏しました。 


Vol.4 ハイドンと疾風怒濤 2009.9.30 (クラヴィコード)

ソナタ 第6番、第32番、第35番、第34番、第3番、第33番

第4回は「ハイドンの疾風怒濤」と題し、ハイドンの作品にはまれな短調の作品を採り上げました。18世紀は理性を重んじる世紀でした。しかしその後半においては後のロマン派に通じるような感情の発露を目指した芸術運動が生まれます。そのような気運とハイドンも無関係ではありませんでした。ここにはハイドンの心の奥底に眠る慟哭にも似た衝動的感情が露わとなっています。この激しい感情の動きを静謐の音世界を旨とするクラヴィコードによって演奏しました。


Vol.5 偽作 真作 2009.10.31 (チェンバロ、クラヴィコード)

ソナタ 第19番、第57番、第21~27番、第49番、第16番、第17番、第52番

第5回は「偽作 真作」と題し、ハイドンの初期中期作品の中から偽作の可能性の高い作品、二つの作品においてある楽章が丸ごと重複している例、そしてハイドンが作成した自作カタログに数小節のみ記録されている作品を採り上げました。真作とされる作品と比較することによってみえてくるもの何かを考えつつ、演奏し聴いていただきました。


Vol.6 円熟への道のり 2010.2.7 (クラヴィコード)

ソナタ 第7番、第30番、第33番、第36番、第46番、第55番

第6回は「円熟への道のり」と題し、1760年代の3楽章による最初期の演奏会様式のソナタ、1773年のエステルハージ・ソナタ、1776年のディレッタント様式のソナタ、1780年代ボスラー・ソナタと年代を追いながらクラヴィコードによって演奏しました。


Vol.7 クラヴィコードで聴くハイドン初期傑作 2010.4.4 (クラヴィコード)

ソナタ第8番:A 第11番:B 第29番:Es 第31番:As 20の変奏曲:G アダージョ:F アレグレット:G 12のメヌエット

鍵盤楽器の選択によって演奏解釈や演奏の聴き方がまったく変わってしまうことは今回のシリーズで次第に明らかになってきたかと思います。普段なかなか演奏されることの少ない初期作品のなかにも、クラヴィコードで演奏することによってピアノによる演奏とはまったく違った面白さが顕在化する作品があります。今回は主としてクラヴィコードの演奏にふさわしい作品を採り上げました。


Vol.8 強弱記号の不思議 2010.5.22 (クラヴィコードとフォルテピアノ)

ソナタ第20番:B 第40番:Es 第47番:h 第60番:C 第61番:D 12のメヌエット 6つの変奏曲:C ファンタジア:C

ハイドンのクラヴィーア作品に書き込まれた強弱記号の謎について言及しました。中期以降の作品においてはじめて現れてくるフォルテやピアノといった強弱記号は果たしてフォルテピアノによる演奏を示唆しているのでしょうか。今回はクラヴィコードとフォルテピアノといった2台の異なるクラヴィーアで演奏することによって、強弱記号にまつわる様々な謎を読み解いてみました。 


Vol.9 偽作真作 II  2010.12.26.(クラヴィコードとフォルテピアノ)

ソナタ第4番:G、第5番:G、第18番:Es、第28番:D、第40番:Es、アンダンテと変奏曲:f、アレグレット:G、教師と生徒:F(連弾)*
*賛助出演:松井典子(フォルテピアノ連弾)

「偽作真作II」では、前回同様偽作に焦点をあて、ハイドンの初期中期作品の中 から偽作の可能性の高い作品、曲の一部分のみ残されている作品、二つの作品においてある楽章が重複している作品を取り上げました。真作と比較することによってみえてくるものは何かについて考えました。


Vol.10 ハイドンのレトリック 2011.10.16 (クラヴィコードとフォルテピアノ)

第12番:A、第37番:A、第38番:F、第39番:D、第45番:A、第51番:Es、オーストリア国歌《神よ国王を守りたまえ》による変奏曲、12のメヌエット(1792年)

ハイドンが用いた様々なレトリックのなかでもユーモアのレトリックに焦点を絞り、作品の魅力とそれを演奏に反映させる方法について考えてみました。


Vol.11 3種類の鍵盤楽器による聴き比べ 2011.12.27 (チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノ)

第41番:A、第42番:G、第54番:G、第62番:Es、カプリッチョ:G、6つの変奏曲(1790年)

第11回は3種類の鍵盤楽器によってカプリッチョ等、同一曲を聴き比べていただきました。前半は考証に基づく楽器選択によって、後半はハイドンの音楽の本質を顕在化させる楽器の選択によって演奏しました。



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*1 カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ『正しいクラヴィーア奏法』第一部 東川清一訳、全音楽譜出版社、2000年、p.16
*2 同、p.19

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